大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)2158号 判決

別紙目録記載の土地(本件土地)が控訴人の所有に属すること、被控訴人が右土地上に存する別紙目録記載の建物に居住し、その敷地である右土地を占有していることは当事者間に争がない。よつて被控訴人の右土地に対する占有権原の有無につき判断する。控訴人が昭和二十一年中別紙目録記載の宅地三十四坪九合六勺(実測三十七坪五合六勺)上に木造トタン葺二階建一棟建坪二十坪二階二十坪を建築し所有していたこと、控訴人が昭和二十六年中被控訴人に対し右建物の内階下右側五坪の部分を期間の定めなく、賃料一箇月金七千円(その後一箇月金一万五千円に値上された)毎月末日支払と定めて賃貸したこと、その後昭和三十二年四月十二日右建物は火災に罹り損傷を受けたことは当事者間に争がない。しかるに被控訴人は右建物のうち少くとも被控訴人の賃借部分については右焼損を受けたにも拘らずなお賃貸借の目的としての効用を失う程度には至らなかつた旨を主張するから案ずるに、証拠を総合すれば、前記建物は右火災により二階部分が殆んど全部焼失し、階下の部分も右側約半分が火を受けて焼損し、殊に被控訴人の賃借していた部分は天井、内外壁、造作類等殆んど焼失し、柱梁の大部分が焼損し、そのため建物として使用し得ない状態となつたこと、よつて被控訴人は罹災後間もなく昭和三十二年四月中から一部の柱の焼け残りの部分等を利用し新に屋根、内外壁、建具等主要部分を自ら補い、新な建物を修築完成し、カメラ材料店を開業したことを窺うことができる。(従つて特別の事情のない限り同建物は被控訴人の所有に属するものというべきである。)しかして控訴人と被控訴人とは焼失前の前記建物の内階下右側五坪の部分を独立の建物と同様に考えてこの部分を目的とする賃貸借契約を結んだことは本件口頭弁論の全趣旨から窺うことができるところ、この部分について上述の焼損の状況に照すときは右火災により右部分はもはや賃貸借契約の目的として効力を失つたか若しくは社会通念上これと同視すべき状態となつたものというべきであつてこれにより右部分を目的とする控訴人と被控訴人との間の前記建物(部分)賃貸借契約は終了したものと解するのが相当である。従つて被控訴人は右賃貸借契約が存続することによつて有していた右部分の敷地を使用し得る権限も上記火災のため失うに至つたものというべく、他に被控訴人において右敷地を占有し得る権原を有することについては何等の主張も立証もない。

(梶村 岡崎 安岡)

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